「求人広告の給与表記って、どう書くのが正解なんだろう…」
「法律違反にならないか不安だし、応募も思うように集まらない…」
このように悩む採用担当の方に向けた記事です。
この記事でわかること
- 求人広告の給与表記が重要な3つの理由
- 給与表記に関する法令順守の基本ポイント
- 応募率を高める給与の具体的な表記テクニック
- 給与表記をめぐるトラブルと裁判例
求人広告の給与表記は、法的ルールを守りつつ、求職者にとって魅力的で分かりやすい書き方をすることが成功の鍵です。
正確な表記は法令違反のリスクを回避し、分かりやすい表記は求職者とのミスマッチを防いで応募率を高めます。
この記事を読めば、求人広告における給与表記の法的ポイントから、応募が集まる実践的なテクニックまで理解でき、自信を持って求人票を作成できるようになります。
さっそく、正しい給与表記の方法を学んでいきましょう。
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Contents
求人広告の給与表記が重要な3つの理由
求人広告の給与表記は、単に金額を提示するだけではありません。
企業の信頼性や採用成果に直結する重要な要素です。
ここでは、給与表記が重要である3つの理由を解説します。
求人広告の給与表記が重要な3つの理由
- 法令違反による罰則リスク
- 求職者とのミスマッチ防止
- 企業ブランド信頼向上
これらの理由は、採用活動におけるリスク管理とブランディングの両面から非常に重要です。
一つずつ見ていきましょう。
法令違反による罰則リスク
求人広告の給与表記を誤ると、職業安定法や労働基準法、青少年雇用促進法などに違反し、罰則を受けるリスクがあります。
特に職業安定法では、虚偽の広告や条件を提示して募集を行うことを固く禁じています。
違反した場合、同法第65条に基づき「6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
求職者に誤解を与える給与表記は、意図せずとも法令違反とみなされる他、企業の信頼を著しく損ないます。
| NG表記の例 | 問題点 |
|---|---|
| 月給30万円(諸手当込み) | 基本給が15万円など、手当の内訳が不明瞭で誤解を招くケース |
| 年収500万円可能! | ごく一部の社員しか達成できない、特別なインセンティブ条件などを明記していない |
| 昇給あり | 実際には明確な昇給制度や過去の実績がなく、求職者の期待を裏切る |
これらの表記は、求職者の期待を裏切るだけでなく、虚偽の条件提示として法的な責任を問われる可能性があります。
基本給と手当の内訳を明記するなど、誰が見ても誤解のない、誠実な情報開示が不可欠です。
正確な給与表記は、法的なトラブルを未然に防ぎ、健全な企業運営の基盤となります。
求職者とのミスマッチ防止
明確な給与表記は、求職者との期待値のズレを防ぎ、入社後のミスマッチを減らす効果があります。
給与は、求職者が企業を選ぶうえで重視する条件の一つです。
情報が曖昧だと、入社後に不満を抱く原因になります。
給与表記が不明確な場合に起こりうるミスマッチには、以下のようなものが挙げられます。
給与表記の曖昧さが引き起こすミスマッチ
- 手当を含んだ総額なのか基本給なのか不明確で、想定より基本給が低かった
- 固定残業代の時間が明記されておらず、長時間労働を強いられる印象を与えた
- 試用期間中の給与が異なると知らず、入社後に生活設計が狂ってしまった
こうした認識のズレは、早期離職の大きな原因になります。
入社前に正しい情報を伝えることで、求職者は納得して応募、入社を決断できます。
透明性の高い給与情報を提示し、双方にとって納得のいく採用を実現しましょう。
企業ブランド信頼向上
正確で誠実な給与表記は、企業の信頼性を高め、ブランドイメージの向上に直接つながります。
求職者は給与表記の透明性から、その企業のコンプライアンス意識や従業員への誠実な姿勢を判断するからです。
ポイント
固定残業代の内訳や各種手当、昇給・賞与の実績などを具体的に示すことで、「この会社は情報を隠さないクリーンな企業だ」という印象を与えます。
誠実な情報開示を徹底し、求職者から選ばれる企業としての信頼を築いていくことが採用成功につながります。
求人広告の給与表記の法令順守の基本ポイント
求人広告で給与を表記する際は、法律で定められたルールを守る必要があります。
知らずに法令違反とならないよう、基本的なポイントをしっかり押さえましょう。
ここでは、特に重要な4つのポイントを解説します。
求人広告の給与表記で守るべき基本ポイント
- 地域別最低賃金の最新額を確認
- 固定残業代の正しい明記手順
- 試用・研修期間で給与が異なる場合
- インセンティブ・歩合給の扱い
これらのポイントは、いずれも求職者とのトラブルを防ぐために不可欠です。
具体的な書き方と注意点を見ていきましょう。
地域別最低賃金の最新額を確認
求人広告に記載する給与は、必ず勤務地の都道府県で定められた最新の最低賃金額を上回る必要があります。
最低賃金は毎年10月頃に改定されるため、常に最新の情報を確認しないと、気づかぬうちに法令違反となる可能性があるからです。
例
厚生労働省の発表によると、2024年度(令和6年度)は47都道府県で50円~84円の引き上げが行われ、全国加重平均は1,055円となりました。
これは過去最大の引上げ額です。
例えば、月給制の場合も時給換算した際に最低賃金を下回ってはいけません。
厚生労働省が示す月給制の最低賃金確認方法は、以下のとおりです。
月給制の最低賃金確認方法
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
厚生労働省のウェブサイトで最新の金額を必ず確認し、求人票に反映させてください。
固定残業代の正しい明記手順
固定残業代(みなし残業代)を給与に含める場合は、求職者が明確に理解できるよう、内訳を正しく明記しなければなりません。
内訳が不明瞭だと、基本給がいくらで、何時間分の残業代が含まれているのか分からず、トラブルの原因になります。
厚生労働省が発行する「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」によると、青少年雇用促進法(若者雇用促進法)に基づく指針で固定残業代の明示が義務付けられています。
厚生労働省の定めにより、以下の3点を必ず記載する必要があります。
固定残業代の必須明記項目
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超えた場合は、追加で割増賃金を支払う旨
厚生労働省が示す正しい記載例
- 基本給(××円)(②の手当を除く額)
- ⬜︎⬜︎手当(時間外労働の有無にかかわらず、◯時間分の時間外手当として△△円を支給)
- ◯時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
これらの情報を正しく開示することで、給与体系の透明性が高まります。
ルールに沿った正確な表記で、クリーンな労働条件を提示しましょう。
試用・研修期間で給与が異なる場合
試用期間中と本採用後で給与額が異なる場合は、その旨と期間中の給与額を明確に記載する必要があります。
この記載がないと、求職者は本採用と同じ給与がもらえると誤解し、入社後のトラブルに発展するからです。
例
「試用期間3ヶ月:月給23万円」のように、期間と金額を併記します。
ただし、試用期間中の給与が最低賃金を下回ることは原則として認められません。
最低賃金法第7条では「最低賃金の減額の特例」が規定されており、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、「試の使用期間中の者」について最大20%の減額が可能ですが、期間は最長6ヶ月以内に限定されています。
入社後の認識のズレを防ぐためにも、条件の違いは正直に記載してください。
インセンティブ・歩合給の扱い
インセンティブや歩合給がある場合は、その計算方法や実績を具体的に示し、求職者が収入をイメージできるように記載します。
「月給25万円+インセンティブ」だけでは、収入の全体像が分からず、求職者は応募をためらいます。
労働基準法第27条では「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と規定されています。
完全歩合制であっても、保障給の支払いが義務付けられています。
固定給部分と歩合給部分を明確に区別し、モデル年収などを示すと効果的です。
| 給与項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 固定月給 | 250,000円 |
| 歩合給 | 売上の5% |
| 年収例(入社2年目) | 600万円(固定給300万円+歩合給300万円) |
また、厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」によると、出来高払制(歩合制)の場合は「出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較」する必要があります。
この表記により、求職者は自身の成果がどのように給与に反映されるかを具体的に把握できます。
最低限の収入が保証される固定給部分を明記することが、求職者の安心につながります。
透明性の高い情報提供で、意欲の高い人材の応募を促しましょう。
参考:厚生労働省茨城労働局「労働基準法のあらまし(賃金支払いの原則、出来高払制)」
求人広告の給与の正しい書き方―月給・日給・時給別の表記方法
給与の記載方法は、月給・日給・時給といった給与形態によって注意すべき点が異なります。
求職者が自身の収入を正確に予測できるよう、それぞれのフォーマットに沿った正しい書き方を理解しましょう。
ここでは、5つの重要なポイントを解説します。
給与形態別の正しい書き方ポイント
- 【月給】基本給と手当を区分
- 【日給】労働時間換算の明確化
- 【時給】端数処理と最低賃金差異
- 月収・年収例の効果的な提示
- 昇給・賞与の頻度と実績表示
これらの表記ルールを守ることで、給与に関する誤解を防ぎ、求職者からの信頼を高められます。
具体的な記載例と共に、一つずつ見ていきましょう。
【月給】基本給と手当を区分
月給制の場合、基本給と各種手当を明確に分けて記載する必要があります。
「月給28万円」と総額だけを記載すると、基本給がいくらで、どのような手当が含まれているのか求職者が判断できず、トラブルの原因となるからです。
特に、固定残業代、役職手当、住宅手当などは、それぞれの金額を明記することが望ましいです。
月給の記載例
月給:280,000円
《内訳》
- 基本給:220,000円
- 役職手当:20,000円
- 固定残業代:40,000円(時間外労働20時間分、超過分は別途支給)
このように内訳を示すことで、給与構成の透明性が高まります。
賞与や退職金の算定基礎となる基本給も明確になり、求職者は安心して応募を検討できます。
【日給】労働時間換算の明確化
日給制で求人を出す際は、日給額だけでなく、1日の所定労働時間を明確に記載してください。
同じ日給額でも、労働時間が8時間の場合と7時間の場合では、実質的な時間単価が異なります。
労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働には割増賃金の支払いが必要です。
例
「日給12,000円(実働8時間、休憩1時間)」のように、金額と労働時間を併記する。
労働条件を具体的に示すことで、求職者は安心して応募を検討できます。
【時給】端数処理と最低賃金差異
時給制の表記では、1円未満の端数処理や、試用期間などによる最低賃金との差異に注意が必要です。
賃金支払いの原則(労働基準法第24条 全額払いの原則)や最低賃金法を遵守するため、細かなルールを正確に理解しておく必要があります。
| 端数処理 | 1ヶ月の賃金総額で1円未満の端数が出た場合、通達(昭和63年3月14日 基発第150号)に基づき、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることは認められています。 ただし、1時間あたりの賃金額に生じた1円未満の端数を切り捨てることは違法です。 |
| 最低賃金との差異 | 試用期間中などで最低賃金を下回る時給を設定する場合は、都道府県労働局長の許可が必要です(最低賃金の減額の特例)。 許可なく最低賃金額未満の時給を設定することはできません。 |
これらのルールを守らないと、賃金未払いなどの労務トラブルに発展する可能性があります。
法令に基づいた正しい時給計算と表記を徹底しましょう。
月収・年収例の効果的な提示
月収例や年収例を提示することは、求職者の応募意欲を高める上で効果的です。
ただし、誤解を招かない客観的な根拠に基づいた記載が求められます。
実現可能性の低い金額を「可能」と記載すると、景品表示法の「有利誤認表示」にあたる恐れがあるためです。
実際に在籍する社員の実績に基づき、「誰」の「どのような」年収なのかを具体的に示すことが重要です。
| 役職・年齢 | 年収例 | 内訳 |
|---|---|---|
| 営業職・28歳・入社3年目 | 520万円 | 月給30万円+賞与+各種手当 |
| リーダー職・35歳・入社7年目 | 700万円 | 月給45万円+賞与+役職手当 |
このように、具体的な人物像と金額の内訳を示すことで、年収例の信頼性が格段に向上します。
求職者は自身のキャリアパスと重ね合わせ、現実的な目標として捉えることができます。
透明性の高い年収例を提示し、求職者との信頼関係を築きましょう。
参考:消費者庁「有利誤認とは」
昇給・賞与の頻度と実績表示
昇給や賞与について記載する場合は、「あり」と書くだけでなく、頻度や金額の算定方法、過去の実績を具体的に示すことが望ましいです。
曖昧な表現では、求職者はどの程度の昇給や賞与が期待できるのか判断できず、企業の魅力として伝わりにくいためです。
昇給・賞与の記載例
- 昇給:年1回(4月)※昨年度実績:平均3.5%
- 賞与:年2回(6月、12月)※昨年度実績:基本給の4.5ヶ月分
- 評価制度:人事考課に基づき、年2回の面談を経て昇給・賞与額を決定します。
具体的な数字や制度を示すことで、企業の安定性や成長性をアピールできます。
実績がない場合や業績連動の場合は、その旨を正直に記載することが重要です。
正確な実績を提示し、求職者の長期的なキャリア設計を後押ししましょう。
求人広告で応募率を高める給与の表記方法
法令を遵守した上で、ほんの少し表記を工夫するだけで、求職者へのアピール力は大きく変わります。
応募率を高めるためには、求職者目線での「分かりやすさ」と「魅力の伝え方」が重要です。
ここでは、実践的な4つのテクニックを紹介します。
応募率を高める給与表記の4つのテクニック
- 一覧表示を意識した書式最適化
- 手取り試算シミュレーション提示
- 固定残業代を透明化する注記例
- 給与以外の魅力(福利厚生等)訴求
これらのテクニックを組み合わせることで、他社求人との差別化を図り、より多くの応募者を惹きつけられます。
具体的な方法を見ていきましょう。
一覧表示を意識した書式最適化
求職者が利用する求人検索エンジンの一覧画面で、給与情報が魅力的に見えるように書式を最適化することが重要です。
多くの求職者は、詳細ページを見る前に一覧画面で複数の求人を比較検討します。
ここで興味を引けなければ、クリックすらしてもらえません。
給与範囲の明確化
求人検索エンジンでは、給与欄の先頭部分が表示される傾向にあります。
「月給25万円~40万円」のように、下限と上限を明確に記載することで、幅広い層にアピールできます。
記号やスペースの活用
【月給】や【年収例】といった記号を使うと、情報が整理され視認性が高まります。
無駄なスペースや不要なテキストは避け、給与額が目立つように工夫してください。
一覧画面での「見え方」を意識した表記で、求職者の最初の興味を引きつけましょう。
手取り試算シミュレーション提示
額面の給与だけでなく、手取り額のシミュレーションを提示すると、求職者は入社後の生活を具体的にイメージしやすくなります。
求職者が最も知りたいのは「実際にいくら手元に残るのか」です。
額面給与から社会保険料や税金が引かれることを前提とした情報提供は、誠実な印象を与えます。
| 項目 | 金額(例) |
|---|---|
| 月給(総支給額) | 300,000円 |
| 健康保険料 | -15,000円 |
| 厚生年金保険料 | -27,000円 |
| 雇用保険料 | -1,800円 |
| 所得税・住民税 | -20,000円 |
| 手取り額(目安) | 約236,200円 |
ポイント
「※上記は扶養家族なし・東京都在住の場合の目安です。個別の状況により異なります。」といった注記は必ず添えてください。
手取り額の提示は、求職者の不安を解消し、応募へのハードルを下げる有効な手段です。
固定残業代を透明化する注記例
固定残業代は、求職者がネガティブな印象を抱きやすい項目です。
だからこそ、透明性を高めるポジティブな注記を加えることで、逆に信頼を得られます。
「残業が常態化しているのでは」という求職者の不安を払拭し、企業のクリーンな労務環境をアピールしましょう。
固定残業代の表記例は、下記のとおりです。
| もったいない例 | 固定残業代:40,000円(20時間分)を含む。 超過分は別途支給。 |
| 応募が増える例 | 固定残業代として40,000円(20時間分)を支給。 ※残業の有無にかかわらず支給し、20時間に満たない場合でも減額はありません。 ※実際の月平均残業時間は10時間程度です。超過した場合は、1分単位で追加支給します。 |
正直で丁寧な情報開示が、固定残業代のマイナスイメージを払拭する鍵です。
給与以外の魅力(福利厚生等)訴求
給与額で他社と差別化が難しい場合、給与以外の金銭的メリットや独自の福利厚生をアピールすることが極めて有効です。
求職者は給与だけでなく、働きやすさや生活の充実度といったトータルパッケージで企業を評価しています。
給与以外の魅力 アピール例
- 住宅手当:一律 月30,000円支給
- 資格取得支援:受験費用全額補助+合格時に報奨金50,000円
- ランチ補助:提携食堂を半額で利用可能(実質月10,000円お得)
- リフレッシュ休暇:勤続3年ごとに5日間の特別休暇と10万円を支給
「家賃補助で手取りが増える」「スキルアップでお祝い金がもらえる」など、求職者が自分ごととしてメリットを感じられるように、具体的な内容と金額を記載してください。
給与欄の近くにこれらの情報を記載し、企業の総合的な魅力を伝えましょう。
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求人広告の給与表記トラブルと裁判例に学ぶリスク管理
求人広告の給与表記をめぐるトラブルは、時に訴訟などの法的な問題に発展するケースも少なくありません。
過去の裁判例からリスクを学び、自社を守るための知識を身につけましょう。
ここでは、採用担当者が知っておくべき3つのポイントを解説します。
トラブル・裁判例から学ぶリスク管理のポイント
- 「見込み額」表記が争点になった事例
- 固定残業代を巡る最新判例
- 求人広告と労働契約の相違点整理
これらの事例と法的整理を理解することで、将来のトラブルを未然に防げます。
それぞれ解説していきます。
「見込み額」表記が争点になった事例
あくまで見込みに過ぎない高い給与額を求人広告に記載し、実際の給与と乖離があった場合、損害賠償責任を問われるリスクがあります。
求職者はその給与額を期待して応募・入社するため、著しい乖離は求職者の期待を裏切る行為とみなされるからです。
裁判例の概要
過去の裁判では、求人広告に記載された「モデル年収」と実際の賃金に大きな差があった事案で、企業側の説明義務違反が指摘されたケースがあります。
裁判所は、年収例が特別な成果を挙げた場合の最高額であるにもかかわらず、その旨を明記しなかった点を問題視しました。
リスク管理のポイント
年収例や月収例を記載する場合は、「あくまで一例であること」「特定の条件(役職、実績など)に基づくものであること」を明確に注記する必要があります。
誤解を招く「見込み額」の表記は避け、客観的な事実に基づいた誠実な情報提供を徹底しましょう。
参考:厚生労働省「募集条件と実際の労働条件が異なる場合|裁判例」
固定残業代を巡る最新判例
固定残業代の有効性をめぐる裁判は数多く、最高裁判所の判例などから示された要件を満たしていない場合、無効と判断される可能性があります。
無効と判断されると、企業は過去の残業代全額を割増賃金として支払う義務が生じ、多額の未払い賃金が発生するリスクがあるためです。
最高裁判例(例:国際自動車事件など)では、固定残業代が有効とされるための要件が示されています。
| 固定残業代が無効になりうるケース | 具体的な内容 |
|---|---|
| 明確区分性の欠如 | 労働契約書や給与明細で、通常の労働時間に対する賃金部分と、固定残業代部分が明確に区別されていない。 |
| 対価性の欠如 | 固定残業代が、どの程度の時間外労働に対する対価なのかが明確に示されていない。 |
求人広告の段階からこれらの要件を意識し、給与規定や労働契約書と整合性のとれた、法的に有効な表記をすることが不可欠です。
最新の判例動向を注視し、自社の固定残業代制度が法的に有効か、定期的に見直すことが重要です。
求人広告と労働契約の相違点整理
求人広告の内容は、直ちに労働契約の内容になるわけではありませんが、トラブルに発展した際には重要な判断材料となります。
法的には、求人広告は「契約の誘引」であり、その後の面接や労働条件通知書の交付を経て、当事者間の合意によって労働契約が成立すると解釈されるからです。
求人広告は「労働契約そのもの」ではない
求人広告に記載された内容は、あくまで募集段階での「提示」です。
そのため、広告と異なる労働条件を最終的に提示すること自体が、直ちに違法となるわけではありません。
変更時の説明義務が重要
ただし、求人広告の内容から労働条件を変更する場合は、その理由を採用選考の過程で求職者に明確に説明し、合意を得る必要があります。
説明なく一方的に不利な条件に変更した場合、トラブルの原因となり、求職者からの信頼を失います。
求人広告と最終的な労働契約の内容に相違が生じないよう、一貫性のある情報管理と、変更時の丁寧な説明を徹底してください。
労働条件通知書との整合性チェックリスト
採用活動の最終段階で交付する「労働条件通知書」は、求人広告の内容と齟齬がないか最終確認するための重要な書類です。
内容の不整合は、内定辞退や入社後のトラブルに直結するので注意しましょう。
ここでは、整合性を保つためのチェックリストを解説します。
労働条件通知書の整合性チェックリスト
- 必須記載事項と漏れ防止フロー
- 労働者交付タイミングと保存義務
- 更新・変更時の再通知ルール
ルールを正しく理解し、運用することで、労務リスクを確実に低減できます。
必須記載事項と漏れ防止フロー
労働条件通知書には、労働基準法で定められた必須記載事項(絶対的明示事項)を漏れなく記載する必要があります。
記載漏れは労働基準法違反となり、30万円以下の罰金の対象となる可能性があるためです。
必ず記載しなければならない事項は以下のとおりです。
特に2024年4月の法改正で追加された項目に注意してください。
| 項目種別 | 主な記載事項(一部) |
|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めの有無、有期の場合は契約期間 |
| (新)有期契約関連 | 更新上限の有無、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件 |
| 就業場所・業務 | 雇入れ直後の就業場所・業務内容、(新)変更の範囲 |
| 労働時間・休日 | 始業・終業時刻、休憩、休日、休暇など |
| 賃金 | 賃金の決定・計算方法、支払時期など |
| 退職 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
ポイント
厚生労働省が提供するモデル労働条件通知書の最新版をテンプレートとして活用し、顧問社労士などの専門家によるダブルチェックを行う体制を整えることが有効です。
法改正に対応した最新のフォーマットを使い、記載漏れのリスクを組織的に防ぎましょう。
労働者交付タイミングと保存義務
労働条件通知書は、法律で定められた適切なタイミングで交付し、一定期間保存する義務があります。
これらのルールは労働基準法で定められており、遵守しない場合は法令違反となるからです。
交付タイミングは「労働契約の締結時」
労働条件通知書は、原則として労働者を採用し、労働契約を締結するタイミングで速やかに交付する必要があります。
一般的には入社日当日に交付しますが、内定時に送付することも可能です。
2024年4月からは、労働者が希望した場合、一定の要件下で電子メール等による明示も認められています。
書類の保存義務
労働基準法第109条により、労働者名簿や賃金台帳など、労働関係に関する重要な書類は5年間(当面の間は3年間)保存することが義務付けられています。
労働条件通知書の控えも、この対象書類に準じて適切に保管・管理することが望ましいです。
交付と保存に関する社内ルールを明確にし、適切な管理を徹底してください。
更新・変更時の再通知ルール
有期労働契約を更新する場合や、在職中の従業員の労働条件を変更する際には、その都度、改めて労働条件を明示する必要があります。
労働者が自身の契約内容や変更点を正確に理解し、納得した上で働き続けることができるようにするためです。
有期労働契約の更新時
パートタイマーや契約社員など、有期労働契約を更新する際には、その都度、更新後の契約期間や業務内容などを記載した労働条件通知書を交付しなければなりません。
特に、2024年4月からは「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングで、その旨の明示が義務化されています。
在職中の労働条件変更時
昇給や異動に伴い給与や勤務地が変更になる場合も、原則として変更内容を文書で明示し、従業員の同意を得ることが望ましいです。
これにより、後の「言った、言わない」のトラブルを防ぎます。
契約の節目や変更のタイミングで適切な情報提供を行い、従業員との信頼関係を維持しましょう。
AIで求人広告の給与表記を自動生成する手順
求人広告の給与表記には多くの複雑なルールが存在します。
これらのルールを毎回確認しながら手作業で作成するのは大変な業務です。
こうした課題は、AI搭載の採用ツールを活用することで、効率的かつ安全に解決できます。
AIで給与表記を自動生成する3ステップ
- HELLOBOSSで募集要項を自動生成
- ガイドライン違反を防ぐ自動チェック
- 社内承認フローへの連携方法
誰でも簡単かつ正確に、法令を遵守した求人広告を作成できます。
具体的な操作を見ていきましょう。
HELLOBOSSで募集要項を自動生成
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特に、専門知識が必要な給与表記の作成において、採用担当者の負担を大幅に軽減します。
募集要項の作成から候補者の発見まで、採用プロセスをワンストップで効率化できます。
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ガイドライン違反を防ぐ自動チェック
AI求人作成ツールを活用する、あるいは生成AIにプロンプトを入力することで、入力された内容が法令やガイドラインに違反していないかチェックできます。
人の目だけでは見落としがちな専門的なポイントをAIが補完し、意図しない法令違反のリスクから企業を守るためです。
生成AIへのプロンプト例
あなたは日本の労働法に詳しい採用コンサルタントです。以下の求人広告のテキストについて、職業安定法、最低賃金法、男女雇用機会均等法などの観点から問題がないかチェックしてください。特に給与表記(固定残業代を含む)に不備があれば、その箇所と改善案を具体的に指摘してください。
#求人広告テキスト
(ここにチェックしたい求人広告の文章を貼り付ける)
専用の採用支援ツールでは、上記のようなチェックが自動で行われ、以下のような項目で問題があればアラートが表示されます。
| チェック項目 | 具体的な検知例 |
|---|---|
| 最低賃金 | 入力された時給・月給が勤務地の最新最低賃金を下回っている。 |
| 固定残業代 | 必須の明記項目(時間、金額、超過分支給の旨)が欠けている。 |
| 差別的表現 | 年齢や性別を不当に制限するような不適切な表現が含まれている。 |
煩雑な法令チェックをAIに任せ、より魅力的な求人内容の考案に集中できます。
社内承認フローへの連携方法
AIは求人広告を作成した後の、社内での承認依頼といったコミュニケーションもサポートします。
承認依頼メール作成のプロンプト例
あなたは丁寧で分かりやすいビジネスメールを作成する専門家です。以下の求人広告の原稿を添付して、上長である山田部長に内容の確認と承認をお願いするメールを作成してください。メールの件名は「【承認依頼】新規営業職の求人広告原稿のご確認」としてください。
#添付する求人広告原稿
(ここに作成した求人広告の文章を貼り付ける)
また、多くの採用支援ツールでは、こうしたやり取り自体をシステム化し、作成した原稿をそのまま上長や関係部署に承認申請できる機能を備えています。
採用活動のコンプライアンスを担保するためには、公開前に複数人でのチェックが不可欠です。
承認フローを効率化・可視化することで、スピーディーでミスのない求人公開を実現しましょう。
求人広告の給与表記についてよくある質問(FAQ)
求人広告の給与表記に関して、採用担当者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
日々の業務で迷いがちなポイントを、ここで一気に解消しましょう。
求人広告の給与幅は何円まで許容?
給与幅の上限・下限について、法律上の明確な規定はありません。
ただし、あまりに幅が広すぎると、求職者が実態を把握できず、応募をためらう原因になります。
「月給25万円~50万円」のように、経験や能力に応じて変動する範囲を、合理的な根拠に基づいて設定することが重要です。
採用したいターゲット層の年収相場を考慮し、現実的な範囲で提示しましょう。
固定残業代に深夜手当を含めて良い?
固定残業代に深夜労働や休日労働に対する割増賃金を含めること自体は可能ですが、慎重な対応が求められます。
ポイント
「通常の労働時間の賃金」「時間外労働の割増賃金」「深夜労働の割増賃金」の各部分を、金額や時間数で明確に区別して計算し、明示する必要があります。
計算が複雑になり、トラブルの原因となりやすいため、専門家と相談の上、時間外労働分のみを固定残業代として設定するのが一般的です。
試用期間の給与差異は何を明記する?
試用期間中と本採用後で給与が異なる場合は、労働条件通知書だけでなく、求人広告の段階でもその旨を明記する必要があります。
例
「試用期間3ヶ月:月給23万円」のように、「試用期間中の給与額」と「試用期間の長さ」の両方を記載する。
なお、試用期間中であっても、原則として最低賃金を下回ることはできません。
「◯◯万円可能!」表記は違法?
直ちに違法とはなりませんが、職業安定法の虚偽広告・誇大広告として違法となるリスクがあります。
これは、実際にはごく一部の社員しか達成できない、非現実的な金額を提示することで、求職者に誤解を与える可能性があるためです。
もし「◯◯万円可能」と記載する場合は、「インセンティブ・賞与を含む、トップ営業の昨年度実績」など、達成条件や根拠を必ず併記し、誤解を招かないようにしてください。
手取り額を掲載するメリットは?
求職者が入社後の生活を具体的にイメージしやすくなり、応募へのハードルが下がるという大きなメリットがあります。
額面給与だけでは分かりにくい「実際に使えるお金」を示すことで、他社求人との差別化を図り、誠実な企業姿勢をアピールできます。
注意
ただし、「※あくまで目安であり、個人の状況により変動します」といった注記は必須です。
最低賃金改定時の求人広告修正期限は?
最低賃金の改定が発効する日までに、求人広告の内容を修正する必要があります。
最低賃金は例年10月1日に改定されることが多いです。
8月頃に発表される目安を参考に、9月中には修正作業を完了させておきましょう。
発効日以降に古い給与額のまま募集を続けると、最低賃金法違反となります。
AI生成した原稿の法的責任は誰が負う?
AIが生成した求人原稿であっても、その内容に関する法的な責任は、広告主である企業自身が負います。
AIはあくまで作成を補助するツールであり、最終的な内容の確認義務と責任は使用者にあります。
虚偽の広告(職業安定法第65条)と判断された場合、AIが生成したという言い訳は通用しません。
AIの出力を鵜呑みにせず、必ず人の目で事実確認と法令チェックを行ってください。
まとめ | 正しい給与表記で求職者からの信頼と応募を勝ち取ろう
求人広告の給与表記は、法令を遵守する「守り」と、求職者に魅力を伝える「攻め」の両立が不可欠です。
さっそく、この記事で解説したポイントを実践し、採用活動を成功に導きましょう。
この記事のまとめ
- 求人広告の給与の正しい書き方を実践する
- 求人広告で応募率を高める給与の表記方法を取り入れる
- トラブルを未然に防ぐためリスク管理を徹底する
- 労働条件通知書との整合性をチェックする
- AIを活用して効率的に求人広告を作成する
これらのポイントを実践することで、求職者からの信頼を獲得し、採用成功へと繋がります。
とはいえ、複雑な法令を都度確認しながら魅力的な求人票を作成するのは大変な作業です。
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この記事が、貴社の採用活動を成功に導く一助となれば幸いです。
